服薬治療は、最近TV等でも紹介されている「プレガバリン(商品名:リリカ)」をはじめとして、症状に応じて消炎鎮痛薬や鎮痛補助薬など各種の薬剤の組み合わせ・量を調整させていただきます。
内服薬は人によって感受性が違うため、まず副作用が出にくい少量から始めさせて頂く場合が多く、初めの1〜2週間は鎮痛効果が得られにくい事がありますが、患者様から痛みの具合をお聞きしながら、しっかりとつらい痛みを和らげてまいります。
消炎鎮痛薬
一般的な「痛み止め」です。多くの消炎鎮痛薬は胃を悪くすることが多いので、当院では比較的胃に優しいと言われている薬を主に使用します。
消炎鎮痛薬としての効果は若干弱くなることが多いのですが、慢性痛の場合では怪我などの急性痛と違って局所に炎症が残存している割合は少ないので、他剤との併用によって弱い「痛み止め」でも十分な効果が得られる場合が多い様です。
この薬は痛みの性質によって使い分ける必要があります。
末梢神経障害性疼痛治療薬
本来は抗てんかん薬として開発されましたが、世界各国で神経障害性疼痛に対する有効性が認められ、数年前にようやく我が国でも痛み治療に使えるようになった薬です。
怪我(組織の損傷)があれば、目に見えないような細い神経も必ず損傷しています。通常は消炎鎮痛薬などで徐々に痛みが改善しますが、まれに比較的早期から異常な痛みや不快な冷感を伴う痛みに変化していく場合があります。また帯状疱疹やヘルニアによる神経根症の場合はかなり太い神経自体へのダメージから痛みがでています。
この薬は神経の異常興奮を抑制することで痛みが伝わるのを正常化してくれる薬になります。副作用として眠気とふらつきがありますから、初めは少ない量で開始させて頂き、様子を見ながら増量させて頂く事になります。
糖尿病神経障害や線維筋痛症に伴う痛みに対する薬(デュロキセチン)
本来は抗うつ薬として市販されましたが、その後これらの痛みに対して有効なことから保険適応が認められた内服薬です。
現在では、人間の体が本来持っている、痛みを抑制する機能(下降性抑制系)を活発化することで痛みを改善すると言われています。
抗うつ薬
糖尿病や線維筋痛種に対するデュロキセチンという薬も当初はこの抗うつ薬として認められていた薬で、それ以外の抗うつ薬にも痛みを抑える効果があるものがあります。
慢性痛の方は痛みの存在からどうしても軽度のうつ傾向となる場合が多いため、その点でも有効です。また人間の体が本来持っている、痛みを抑制する機能(下降性抑制系)を活性化する事で痛みを和らげる効果があります。
抗てんかん薬
本来はてんかんの治療薬ですが、てんかん自体は脳神経細胞の異常興奮から発現する疾患であり、末梢神経においてもその神経の異常興奮を抑える点から有効性が認められ、本来は抗てんかん薬であった末梢神経障害性疼痛治療薬もこの仲間です。
この中でテグレトールという薬は三叉神経痛に対する特効薬として昔から用いられております。
血管拡張薬
末梢血管を広げる薬です。脊柱管狭窄症などの物理的な圧迫がある状態や、交感神経が過剰に緊張して血流が悪くなって痛みが出ているような状態に使います。
非麻薬系オピオイド鎮痛薬
麻薬は人類最古の鎮痛薬の一つで、強力な鎮痛効果を発揮しますが副作用も強く、麻酔や癌性疼痛に限って使われていました。
ところが近年、痛みの仕組みの研究が進歩し、非癌性疼痛にも麻薬系鎮痛薬が有効であることが分かかってきたと共に、麻薬の鎮痛作用部位に選択的に効く、非麻薬性の鎮痛薬が開発されました。この薬は副作用がかなり軽減されているため、きちんとした対処をすれば日常的に使う事が可能になりました。
主な副作用は便秘と吐き気ですが、制吐剤と下剤の併用で対応できる場合が殆どです。
しかし個人差が大きく、さらに痛みの強さの評価による微妙な調整も必要です。
高齢者の場合や多くの薬剤併用している患者様の場合は体調の変化等でも様々な副作用が見られることがありますから注意深い観察も必要です。
ノイロトロピン
この薬はかなり古くから用いられている、帯状疱疹後神経痛、腰痛症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、変形性関節症に対して保険適応のある薬です。
普段は有効性が感じにくい場合も多い薬ですが、この薬だけが非常に有効な症例もあり、何故効くのか分からなかった薬ですが、最近の脳科学の進歩で、徐々にその作用機序が解明されつつある様です。